「──…なに、やってんの。」
俺の声にビクッと肩を動かす男。
先輩は、涙目で俺をじっと見つめた。
なんだよ、その顔。
いつもの凛々しい先輩はどこいった。
こんな、ときにだけ。
ずりぃよ。
「…その手、離せよ。」
先輩を壁に押し付けていた手を、チラッと見る。
どうやら俺は、見合いにたて続いて面倒事が起きたせいなのか、とても不機嫌だった。
イライラして、仕方ない。
男の顔のひきつりようから見ても、俺はとてつもなく嫌悪感を含んだ目つき…というか、男を睨んでいるのだろう。
「…この女を殺さないと、俺の首がとぶんだよ。
だから、無理。」
俺より絶対年上であろう男は、少々怯えながら言った。
「まだ上がいんのか。
そいつは誰だ。」
「……」
って聞いても言わねぇよなー。
どうすっか。
てか、まず先輩を助けることが先だろ。
…ん?
何で先輩助ける方向に向かってんだ、俺。
自然に助けるとか言ったけど。
「…んなの、決まってんだろ。」
「はぁ?」
「俺がムカつくからだよ!」
言うと同時に強烈なカウンターをくらわせ、男が倒れた拍子に先輩を路地から連れ出した。


