───龍太side
『今日のお見合い、忘れてないだろうな。』
すっかり忘れてた。
父さんからの電話で、うっかりしていたことに気付く。
そうして急いで学校から帰ってきたわけだが。
(スーツって動きづれぇ…)
なれない服を着ているせいか、少し緊張する。
別に、お見合いに対してはなんの緊張もしていない。
相手がどんなヤツとか、そんなのどうでもいい。
政略結婚なんてまっぴらごめん、と言いたいところだが、言える立場でもない。
相手が可愛くて、おしとやかで、女子力が高ければ、俺は困らないし、別に文句もない。
ただ、俺がソイツを愛することは一生無い。
「私は会議があるから、遅れて出席する。
それは相手方にも伝えてあるから、お前は失礼の無いようにな。」
そう言って、父さんは車に乗った。
父さんの乗った車が見えなくなると、ふぅっとため息をついた俺。
「行きたくねぇな…」
ぼそっとつぶやいて、俺も車に乗った。


