「あー、なんだっけ、あの人の名前。」
「その手にはのらねぇぜ~?」
その手ってどの手だ。
「西園寺…だったかな~、
今朝あたしが喧嘩ふっかけた人だ。」
「………アンタ、あの西園寺に喧嘩ふっかけたのかよ。
つくづく馬鹿な女だな……。」
その顔、あたしを馬鹿にするより尊敬してるように見えるんだけど。
「まぁおしゃべりはここまでだ。
大人しく、死んでくれや。」
……ヤダわ。
誰がおとなしく死んでやるかっつの。
あたしにはまだ、やるべき事も、義務も責任も沢山あるんだから。
「悪いけど。
まだ死ねないのよ。」
「で?
どうすんだよ。
言葉だけじゃ、この状況は乗り切れないぜ?
一応俺だって、金もらって仕事してんだ。
しくったら罰を受けるのはおれなんだかんな。
まぁ、殺られる前に殺れってやつだ。」
殺られる前に、殺れ…。
いやいや、人殺しにはなりたくないし。
それこそ金持ちの思うつぼだし。
「あぁ、めんどくさいなぁ。」
「ソレ、強がり?w」
…だって、殺意向けられたの初めてだし。
自分の死なんて、考えたことも。
だから今、震えが止まらないのは当たり前で。


