後輩レンアイ。


路地に人気はなく、午後の日の高い時間だからなのか、店の看板のランプさえついていない。

当然だろう。
ここは夜の街。
本来の街の姿は、真っ昼間に来るところではない。

ホテルくらい開いてるところはあるだろうけども。

「先にお金を……」
前を歩いていたあたしは、立ち止まり振り返ると、続きを言えなくなった。

悲鳴すら、恐怖で凍る。


あたしは初めて、人にナイフを向けられた。


「わざわざ奥に進んでくれるとは好都合だったな。
振り返ったのは誤算だったが、まぁ知らぬが仏ってヤツだ。

可哀相になぁ。
後ろさえ見なきゃ、ひと思いにあの世へ行けたものを。」

そう言って、男はにんまりと笑った。
さっきとは違う、張り付けた笑みではない、汚いゲス笑い。

「…アナタは、何者?」

「悪ぃな、オジョーサンよ。
アンタ、なんかあの人怒らせるようなこといったんだろ。

ダメだぜ、こういう目に遭うって事くらい予想しとかないと。」

あの人……?
誰だ、それ。
あたしには、全く見当もつかない。
でもそれは、決して自分が潔白だからなどではなく、黒い部分が多すぎてどれだかわからない、ということ。