無事に入学式も終わり、
クラス替えでは樹と颯太と
一緒のクラスになれた

そして、三人で野球部の担当の先生に
入部届けを出しに行くと…

「おまえら…野球部入部するのか?
そっか…俺は朝比奈忠(あさひな ただし)
っていうんだ。よろしくな」


スーツを着崩していてこの先生が
野球部の担当の先生らしい。

「…後ろの女の子は?」

「あ、はい。私、野球部マネージャー
希望できたんですか…」

「…残念ながら野球部マネージャーと
いう仕事はこの学校にはないんだ。」

朝比奈先生は髭を触りながら入部届けを
じーっとみた

「どういうことですか」

「マネージャーという仕事は必要ない
…そういうことだ」

「でも、やりたいです」

先生の目を見て言った

野球部という憧れの存在のマネージャーになりたい、そんな夢が私にはあった

「じゃあ、条件を出そう
野球部全員を練習に参加させろ」

野球部全員を練習に参加させろ。


一体、どうしてこれが条件なのか
私はさっそく野球部の練習を見に行くと

入学した一年生は野球部のことが
気になり何人か見学に来ていた

「…ねぇ、見てよ。晴」

樹が練習をまじまじと見ながら晴に言う

「八人しかいない」
そう、人数を見ると八人しかいないのだ

「…たしか野球の人数って」

「最低でも九人は必要だな」

「でもおかしいね。
この間の県大会は出場できてた
ということは…最低でも十人はここの
野球部に所属してるはずだ」

樹が鋭い目を光らせて言う

「厄介そうだね…晴はどうしたい?」

樹が穏やかな口調で私に聞いてきた

「私は…やるよ。やる気あるもん」

「それでこそ晴だね」
そういって樹は笑った

これを乗り越えたら
野球部のマネージャーになる

そう思うと不安よりも
期待のほうが高まってきた。


とりあえず、キャプテンに話を聞こう

樹は冷静に物事を理解しようとする
ということが癖でいま、真剣なのも
理解しようとしているからだ

「あの、すいません…」

樹がキャプテンらしき人に声を掛ける

「お?入部希望者?」

その人は身長が高くてがっしりとした
体つきの人だった

「俺はここのキャプテンの
月宮幸人(つきみや ゆきと)って
いうんだ、よろしくな」

「それよりも、聞きたいことが
あるのですがいいですか?」

樹は目的を忘れないように冷静になる

「実はこのチームで練習にきてない人
がいますよね?その人たちについて
教えてくれませんか?」

小宮キャプテンは笑顔だった顔が
冷静の顔に変わった

「…綾上と橘田のことか」

キャプテンはすこし
冷静な顔を見せていたが…


少し顔を曇らせ

「あいつらがどうかしたの?」と聞いた

「その二人は練習に来ないんですか?」

キャプテンの威圧感を跳ね返すように
颯太が質問をする

「綾上と橘田か…あいつらは
試合にしか来ないな。」

そう言った瞬間
「橘田…?橘田さんって
あの橘田奏斗(きった かなと)さん
なんですか??」
晴が満面の笑みではしゃいでる

そうするとキャプテンは察したのか
「あぁ。一昨年、甲子園で
天才ピッチャーと言われた…
あの、橘田奏斗だよ。」

はしゃぐ晴の目の前で
キャプテンは少し寂しそうに笑うのを
樹は見逃さなかった





橘田奏斗は一昨年、
甲子園にいる人々を興奮させた。

彼は一年生なのにピッチャーとしての
完璧な才能があり、甲子園で
一目置かれている存在だったのだ。

「…橘田は来ないよ。」
月宮は寂しそうに言った

「なんでですか?!橘田さんの才能は
素晴らしいじゃないですか!」

晴は野球が好きだということがあり
今までの甲子園のDVDなどを
全て見てるだけあり、橘田の存在は
知っていた

「橘田は試合にしか来ない。
橘田のことはほっといてやってくれ。」

さっきの笑顔はどこに消えたのか。

「橘田は…辛いんだよ」

橘田には辛い過去があると
月宮は告げた。