やがて彼は、立ち止まった。

決められた位置で、決められた時に止まったような滑らかさで、足は静止した。

少年はすぐに、首だけで振り返った。

正面の、どこまでも続く砂浜と黒く浮かぶ大海原から、その視線は一瞬にして、空に漂う女性へと向けられた。

背から、月の光のように白く輝く羽を生やし、誰もが見とれるような白いドレスを身にまとった彼女は、静かに口を開く。

「今夜。」

ただ一言、それだけが波の音に消されると、少年はまた前を向いた。

「ああ。」

とだけ返す彼は、下唇を噛み締める。

これ以上歩けない。