波が、静かに揺れた。

夜空に浮かぶ月は、その波に映り、かき消されそうになりながらも、そこにいた。

昼間の日差しは見る影もなく、時折涼しげな風が、何もない砂浜を駆け抜けてゆく。

誰が望むわけでもなく、ある少年が踏みしめた砂は、綺麗に彼の靴の跡を残していた。

彼はただ、ひたすらに歩いていく。

決して速いとは言えない速度で、それでも尚、歩き続けていた。

鋭い目つきで下を見ながら、悲しげな表情で歩みを進める。