体は小さいけれどガッツがあって、仕事では顧客からの評判もいい。

サービス業の会社なだけに、その人当たりの良さで、紗雪は上司からのウケが良かった。

明るくて真っ直ぐで、どこか実花に似ている。

そんな思いから、紗雪の告白にはOKをした。
ただ、実花の事を隠すわけにはいかない。

だから、包み隠さず紗雪には実花の話しをした。
それでも変わらず俺を好きでいてくれる紗雪と、ようやく付き合って一年経ったのだった。

そして明日は、初めてのクリスマスだ。

今年は実花と過ごせない。
その覚悟をしながらも、どこか後ろめたさも感じる。

いい加減、前に進まないといけないと思いながらも、忘れられない実花への想い。

明日は、俺にとっても大事なクリスマスになりそうだ。

それに、今年は20代最後のクリスマス。
俺を支えてくれている紗雪にも、きちんとした答えを出さないといけない。

そして、このマフラーもいい加減手放さないと…。

実花が亡くなってから、毎冬必ず使う最後のプレゼント。
このマフラーを手放せた時、俺の実花への未練も消えるだろうか。

「柊ってば!ボーッとし過ぎだよ」

「ごめん、ごめん。そういえば、明日どうするか?」

昼間から会うのもいいし、夜からでもいいしな。

ただ、夜に帰るというパターンだけはやめて欲しい。

すると、紗雪は意外な事を言ったのだった。

「明日もあさっても、会わない様にしようよ」

「えっ!?何でだよ?」

クリスマスに恋人同士が意図的に会わないとか、聞いた事がないぞ?

まさかの台詞にア然とする。

すると紗雪は、小さく口角を上げて微笑んだのだった。

「柊には他に、過ごす相手がいるでしょ?」