ずっと堪えていた想いが溢れ出す。
この4年間、どれだけ実花を想ってきたか。

紗雪といても、いつも心の中には実花がいた。

「なあ、だから抱きしめさせてくれよ。俺はずっと後悔してたんだ。あのクリスマスの日、何で実花を迎えに行かなかったのかって」

すると、実花の表情が寂しげに変わった。
そして、まるでバリアでもあるかの様に実花に近付けなかったのに、すんなりと実花の目の前まで近付けたのだった。

そして、実花を強く抱きしめた。
温もりも甘い香りも感じられる。
生きている頃と何も変わらない、実花の感触だ。

「柊が、自分を責めているのが辛い。私は、あの日事故に遭う運命だった。それは、柊のせいなんかじゃない。だからお願い。もう、私の事で思い悩むのはやめて…」

「そんな簡単に割り切れるかよ。俺はずっと寂しかったよ。実花だって寂しかったろ?」

4年間、ずっと会いたかった実花に会えて今思う事は、このまま俺も目覚めなくていいという事。

俺も実花と同じ様に、車にはねられたんだ。

それならば、これも運命。
このまま実花と、違う世界に行ったっていい。

そう思ったのに、実花は首を横に振った。

「私は寂しくなんかなかったよ。その代わり、心配した。私を引きずってる柊が、心配で仕方なかったの」

「心配…?俺は、このまま実花と一緒に行くよ。実花の事故が運命なら、俺の事故も運命だ」

必死に食いつく俺に、とうとう実花の顔は険しくなった。

「バカ柊!柊の事故は運命でも、私と一緒に行く事は運命じゃない」

「何でだよ…。なあ、実花。俺はもう、実花と離れたくない」

不覚にも涙が流れた時、実花の手が優しく俺の頬に触れた。

「ねえ、柊。誰の声が聞こえる?静かに聞いてみてよ」