「お邪魔しまーす......」


そう小さく言って、2人で綾場さんの部屋に入った。


部屋には、大きなピアノがドーンと鎮座していた。


綾場さんはおもむろにピアノの蓋を開け、そっと人差し指で


――――ポ―――ン......


と音を鳴らした。


そしてあたしの方を振り向いた。


「......噂、ホントだよ」


「うん。......でも、綾場さんは、何の理由もなしにあんな事をする人じゃない」


そう言うと、綾場さんはほぅ......と深く息をついて、笑った。


「......アタシの事、信じてくれた人、初めてだ」


綾場さんはそっとあたしの前に座って、ちらりとピアノを見た。