黙って、撫でている頭が上下に揺れた。



さらに強く抱き締められて痛い。


でも、


「ごめん…ごめんね…」


そう、何度も何度もれーおは繰り返すから、怒る気になれなかった。



絞り出すようなれーおの謝罪に胸が張り裂けそうだ。




だけど


私に切なくなる資格はない。


泣いちゃだめだ。


そんなの、ずるい。






不意に、れーおの体が離れて空気が冷たく感じる。



「…ちゃんと、他に好きな人つくるよ。もう、まなちゃんのこと好きになったりしないから……ごめんね……ばいばい……」




“ばいばい”


れーおの声が頭に響いた。





寂しく思う自分と、安心する自分がいる。




気がつけば、私は俯いていた。



顔を上げたそこにはもう、れーおはいない。






何故か、彼とは二度と会えない気がした。








「…………幸せになって……」





この言葉は、れーおに向けて言ったのか。
先輩に向けて言ったのか。

自分でも解らない。



ただ、気づけば呟いていた。





……愛おしい人へ。


あなたに幸あれと願う。











そうなれば、私の気持ちも報われると思うの。







……そんなことを思った自分に、苦笑いする。




「自分勝手ね……」