「……お疲れ様でした」
「ん、お疲れ様。じゃあね、また明日」
「はい」
先輩の車が駐車場の手前にあったのが幸いだった。
車に乗り込んだ先輩を見て心の底でそっと、安堵の息をつく。
でも、先輩が車を走らせる手前、
「気をつけて帰りなよ」
なんて言われてしまって、私は苦笑いしかできない。
こんなことで喜んでる自分が恨めしい。
私はなんて単純なんだろう。
高鳴る鼓動を抑えるように、胸の辺りをぎゅっと掴んだ。
きびすを返して歩き出す。
私の車が見えてきて、あることに気がついた。
「あ…」
私の車の隣に見覚えのある人陰がある。
「れーお…」
私が名前を呼ぶとれーおが顔を上げた。
その顔は笑ってはいなかった。

