下唇を噛んで家に帰ったら歯が口紅で赤くなった。
そんな自分の姿を鏡越しに見て、眉をしかめる。
「…マヌケな顔」
いつものようにご飯の準備をして、ご飯を食べて、お風呂に入って、ベッドに寝転がる。
今は9時。まだ眠れそうにはなかった。
ふと、ベッド脇にある本棚から一冊のそれを取り出す。
アルバムだ。
沢山ある写真の中から一枚の写真を見つけ出した。
「…懐かしい…」
そこに写るのは、泣いてるれーおをあやす私。
一人っ子の私はれーおが可愛くてしょうがなかった。れーおが弟だったら良かったのに…って何回もお母さんに文句を言っていたこともあった。
「もし…れーおが私の弟だったら…」
楽しかっただろうなぁ。
ケンカもしたかな…?
でも、仲直りして。
れーおが反抗期に入ると『姉貴』なぁんて呼び出して…。
もし、私たちが姉弟だったら…れーおは私を好きになることはなかったのかな。
色々な想いを巡らせて、込み上げてきたどうしようもない愛しい気持ちに顔を綻ばせて、私は写真のれーおを撫でた。
もう、逃げないわ。