な……に……?


目の前には、目を瞑ったれーおがいる。



唇に感じる独特な柔らかいものを理解するまで時間がかかった。



私……、れーおにキスされてる……?


「ーっん!」


やめて!は、離して!


必死に抵抗するが、れーおは私の頭に手を回して……れーおの体は微とも動かない。



うそ…やだやだやだ!



れーおの胸板を拳で叩くと、れーおはやっと唇を離して


「……俺じゃ、だめ?」


息の上がった声でそう囁くと、また唇を重ねた。


お互いの吐息を重ね、キスはどんどん深くなる。



れーお…。

お願いだから……。



私の思いとは裏腹に、れーおの舌が入ってきて……。


「ーっ!?」



気づけば、私はれーおの頬を思いっきり叩いていた。



れーおは目をまん丸にしている。




たまらなくなって駆け出した。


息が上がって涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら走った。


駅に着いても手の痛みは消えなくて……。


私は、彼を叩いのとは逆の手を唇に押し付けて唇を拭った。


何度も…何度も…。