胸に抱える本を更に強く抱き締めた。
「君が好きです」
「…」
「俺みたいな奴は嫌いですか?」
「……そんなことっっ!」
全てを放棄したような笑みを浮かべて、忍を見つめる目には涙が見えた。
「違います。…嫌いじゃない」
首を振りながら、せがむような声色で彼に訴えかけた。
好きな人へ思いを伝えることの怖さ、不安に対して、忍は何て酷く残酷な言葉を言ってしまったのかだろうかと酷く後悔していた。
「……嫌いじゃないって?」
俯いていた顔を少し上げて上目遣いで忍を見て問い掛けてきた。
忍には微かに千尋の口角が上がっているように見えた。
「………私はあなたにふさわしい人間ではありません」
彼の隣で笑うのはもっと可愛くてスタイルのいい女子に決まっている。
そうでなくちゃ可笑しいのだ。
忍はそう考えながら、彼の隣で微笑む自分の姿を想像してみた。