千尋と三毛猫書店で逢ったこと、彼がJYANDOL-Ⅰ-を持っていたこと、逃げるようにその場を立ち去ったこと。
「その本を今日買おうと思ってたんです。智弥と一緒に三毛猫書店に行こうって」
彼は苦笑いの混じった笑顔を浮かべながらまた本を見た。
物欲しそうな目をしながら言葉を続けた。
「それ、JYANDOLって主人公の名前っすよね?俺、あんま本読まないんすけど、この話は好きっす」
彼は話してる最中ずっと、忍と本を交互に見ていた。
「これ…、-Ⅱ-っすね。話どうなるんすか?」
「え?言っちゃっていいんすか?……!?」
とっさに口を隠した。
でも千尋は弱みを掴んだ悪魔のような笑みを忍に見せた。
「ハハッ、移ってる!ハハハッ」
彼は椅子を跨いで座わって、背もたれを抱えながら忍の机を溢れだす笑いを発散しようとバンバン叩く。
あまりの笑いっぷりに苛立ちを覚えた忍は彼の座る椅子を思い切り蹴った。

