2組の集団から少し離れた場所に4人で遊んでいると、さっき忍達も通った入場口から伸びる道に“ちー君”の姿を見つけた。
濃い紫のパーカーに折られた裾裏は赤いチェック柄のついたチノパンという格好だった。
引き締まった足首には2本のミサンガが見えた。
だんだんこちらに近付いてくる彼から目を反らして、林達との会話に戻った。
近くにある1組の集団から彼を呼ぶ男女の声が聞こえ、それに答える男の声が耳元で出された声のように一際大きく聞こえた。
次第に声は遠くなり、3人との会話に花を咲かせていると横で話す河崎の声より大きくしっかりとある言葉を捕えた。
『ほら、あの青い子』
その言葉はちー君という男子とよく一緒にいる人の言葉でその示す相手が自分のことのように思った。
その後は特に引っ掛かる言葉は耳に入らなくなり、すっかり3人の世界に溶け込んでいた。
だが、忍は3人との会話が途切れるごとにあの言葉の意味を探していた。