『もっと惚れさせてやらぁ』
くそ、可愛い~っ!
抱き締めようと手を広げたが、公共の場では触らせてもくれないのを思い出して止めた。
千尋の気持ちを察したのか歩きだした忍は、宥めるように呟いた。
「今度また遊ぼうか、ポップコーンが食べたくなってきた」
「映画?じゃあ俺、見たいのある!」
先に行く忍の横に並んで言うと、優しく笑って、マフラーに顔を埋めてしまった。
「陽染っていう映画なんだけど…」
図書室の廊下で思い出した映画のタイトルを伝えると、知らなかったらしく、疑問系で返事が返ってきた。
「ひぞめ?今やってんの?」
「昔のだけど、借りて俺の家で観ようよ」
「アニメ?」
千尋が頷いて答えると、楽しそうに頬笑んだ忍は、「観たい」と一言返して前を向いてしまった。