「お母さん、外食するの?」
「そうしようかと思っているけれど、みんなはお腹が空いた?」
「俺は空いたな。すぐそこの店にしない?」

 空夜が提案した店は和食屋。窓から店内を見ると、他の客はいるものの、待つ必要はなさそうだった。
 店の階段を上って店内へ入ると、店員が禁煙席まで案内した。メニューを開いて、育実の隣にいる母親にも見えるようにテーブルに置いた。

「育実、決めた?」
「決めたよ」
「璃穏君は?」
「俺も彼女と同じもので」

 母親はそれぞれ食べたいものを店員に伝えた。

「食事が終わったら、買い物へ行きましょうね」
「お母さん、何を買うの?」
「食材がもうほとんどないのよ。荷物持ちをお願いね」
「あんまり買い過ぎるなよ。重くなるから」

 外食にしたのは冷蔵庫の中が空に近い状態だったからと知った。
 いつもだったら、家族の食事を作るのは育実が担当。

「料理が得意なんだね。すごいな」
「そんなことないよ」
「いつも育実に作ってもらっているの。楽しみにしていて」