育実が前に進もうとすると、靴下も濡れているので、後ろに倒れそうになった。
 空夜と璃穏が育実を支えたので、どこも怪我をしなかった。

「ったく、本当にヒヤヒヤさせられる・・・・・・」
「二人ともありがとう」

 タオルで拭いてからキッチンへ行くと、母親がコーヒーを飲んでいた。

「おかえり」
「ただいま」
「ただいま戻りました」
「璃穏君、ボウリングはどうだった?」

 璃穏は楽しかったことを母親に告げた。

「璃穏兄ちゃん、今日は育実がずっとつまらなそうだったぜ?」
「そうなの?」
「く、空夜!」

 璃穏は目を見開いて、その通りなので、母親は何度も頷いた。

「話しかけても会話が続かなかったからな・・・・・・」
「そ、そんなことないよ!」

 育実が否定しても、それは無駄なことだった。
 母親はコーヒーカップを水につけて、そのまま自分の部屋へ戻った。