まだ練習して十分しか経っていないのだから、諦めずに頑張るように応援される。
 そのとき男子達が騒いでいるので育実と一桜が見ると、璃穏と友希の打ち合いがずっと続いている。

「いつまで続くの?あれ・・・・・・」
「授業が終わるまで?」

 練習を止めて見続けていると、友希がラケットを思い切り振って、手から滑り落ちた。

「かなり続いたね・・・・・・」
「本当に・・・・・・」

 練習に戻ろうとすると、璃穏が育実の視線に気づいて、にっこりと笑った。

「育実?早く・・・・・・」

 一桜の声は育実に届いていなくて、育実は璃穏に笑顔を見せていた。それを見た一桜がそれ以上何も言えず俯いていると、誰かが避けるように大声を出した。
 気づいたときには一桜の手首にラケットが当たっていて、その痛みで顔を顰めた。

「ごめん!大丈夫!?」
「う、うん・・・・・・」

 ラケットを飛ばしてしまった女子が手を合わせて謝った。
 いつの間にか育実がすぐそばまで来ているので、一桜は驚いた。
 
「手首捻った?大丈夫?」
「大丈夫だよ。育実」

 大丈夫であることを伝えたものの、本音を言うと、変に捻ったからやはり痛い。

「練習戻ろうか・・・・・・」
「駄目だよ!」