母親は食べようとした手を止めて、空夜を叱った。
 初めて長い入院となったので、退屈と寂しさが入り混じった入院生活を送っていたことを思い出していると、空夜が弁当の話に戻した。

「さっきの話だけどさ、前から頼みたかったんだよな。時間になったら、俺が起こすからさ」
「毎日?」
 
 それはさすがに勘弁してほしい。毎日早起きするのはしんどい。

「できれば毎日がいいな。けど、せめて週二でも作って!学食より育実の手作りがいいからさ」
「わかった。週二ならいいよ」
「よし!サンキュー!」

 その後、空夜は母親から自分の料理は嫌なのかと何度も質問攻めをされていて、買い物のときに育実は母親に重い荷物を強制的に持たされた。

「よろしくね?」
「はい」

 璃穏と一緒に生活するようになってから、育実は彼についてわかったことがいくつもある。
 髪の毛を茶色に染めているのは家族が髪を染めているから、真似してやった。髪を染めることを禁じられている学校では黒髪にしているが、休みになると、すぐに髪を染めている。
 育実が璃穏にドライヤーを渡すため、脱衣所へ行ったときに上半身裸を見て、育実は自分の足にドライヤーを落として、パニックになっていた。いくつも痣が残っていて、見ていて痛々しい。