「一口食べる?はい」
「いいの?ありがとう」

 潤一は発売されたばかりのパンを一口分手でちぎって、育実に渡した。

「美味しい!」
「だろ?」

 楽しそうにしている二人を一桜が見ていると、潤一の動きが止まった。

「今来さんも食べたいの?」
「くっ!いらないわよ!」

 一桜は弁当に視線を落とし、それをさっさと食べてしまった。
 放課後に一桜は潤一にどうして急に育実との距離が縮まったのか問い質すことにした。

「それで何?」
「だから、育実と急に仲良くなった理由を知りたいの!」

 苛立ちをぶつけるように、目の前にある机を両手で強く叩いた。

「いくみんから何も聞いていないの?」
「そうよ!」

 そもそもどうしてそのことが気になるのか潤一が質問すると、一桜は育実の友達だから知りたくなったことを伝えた。

「ちょっとしたことがきっかけだな」
「それを知りたいの!」

 知りたいことを知ることができず、一桜の声がだんだん荒っぽくなる。

「そんなに嫌?」
「な、何が?」

 潤一と育実が仲良くなることが嫌なのか質問すると、一桜はぐっと押し黙った。

「他の男子がいくみんと一緒にいるときもそうだよね」
「な・・・・・・」

 予想外のことを言われた一桜は言葉を失った。