「しろちゃん遅いね」
「あづいよー、もう無理、むり無理ムリムリ!!」
暑がりである風間はギブアップ寸前…いや、もうしていた。
「なにが無理なの」
「しろちゃん!!」
「しろー」
「あー、やっほー」
「僕より遅いってどういう事」
「死ぬ」
「やぁ、春、竹馬、白梅。やっほー。そうだね、君より遅くなるとはちょっと羽目を外したね。暑さで死ぬ世の中になったからね、風間。生きるんだ」
器用に一人一人に挨拶をしてはにっこりと微笑む宮代がそこにはいた。
「ちょっと予定より大分遅くなってしまったね。不覚不覚。」
微笑むその姿は本当に綺麗で美人さんと呼ぶのに相応しいだろう。
「ふぁ…」
「どうしたの?眠い?」
「うん、寝不足」
「うっそだー、宮代からメールもらった後から今の今まで寝てたんでしょー?」
「今の今までではない」
「まあまあ、風間が死にそうだ。とりあえず車に入らないか?」
宮代に進められ黒塗りのいかにも高級車に乗る。
宮代の家は金持ちだからね。
うらやま。
車に乗るなり飲み物を頂く。
「生き返るー…」
風間のその一言にみんなの頬が緩む。
「ごめんね、こんな暑い中待たせてしまって。最近は来る日来る日が最高猛暑日もして観測されていて凄いね。関心ものだよ。」
「さすが宮代。ニュース見過ぎ」
白梅が竹馬の腕をぎゅーっと握る。
当の竹馬は乗車して5分で夢の中だ。
白目向いている。
「しかしほんとに急だったね。」
僕の言葉に松井もウンウンと首を縦に振る。
「まあ、みんな予定なかったでしょ?」
「いや、ゲームしてたし」
と風間。
「寝てたかった」
と僕。
「撮り溜めしてたアニメ見たかったなー」
と松井。
「みんなと会いたかった!」
と白梅。
「まぁまぁいいじゃないか、それにしても外に出ようよ君ら」
宮代の目は僕、風間、松井の3人を見ていた。
思わず目を逸らす。
「まぁいいや。今、僕の一家はちょっとここから離れた宮島ってところに行っているんだけど、あぁ、そうそう。じいちゃんもそこにいるよ。じいちゃんがさ、去年は皆ばらばらにだったけど、来てくれていたからなんで今年は来ないのかって騒いじゃってさ。お母さんも僕が仕事ばっかりして学生の本分を味わっていないからって今回許しを貰えたんだ。」
「宮代も大変だよねぇ、家業とはいえ、高校の今からお仕事をしているんだもん。」
「はは、ありがと、白梅。そんなに凄いことでもないよ。でもまぁ、そこの三人は少しくらい興味を持って欲しいや。」
軽蔑するような宮代の目は僕達を捉えていた。
「間違えた。白梅以外全員だったわ」
僕と松井と風間は新しく出た漫画の貸し借りを行っていた。
「えーもうその新巻出てたんだ」
「そうだよ、これ買うために僕こんな暑い中外に出たんだよ」
「あれ?ネットで買わなかったの?」
「と、特典…」
「あぁ、なるほど」
「うん、聞いてないや、いいや」
「宮代どんまい」
「いいんだよ、彼らはあの話で盛り上がるからね。そっとしておこう。」
「宮代も読む?」
「あぁ、読む」
「じゃあ、風間、松井、宮代の順な」
「あたしも読みたい読みたい!」
「たぶん竹馬も読むだろうからその後ね」
「む…、わかった…」
白梅は口を尖らせてううーと唸っていた。
そんなことも知らずに竹馬はぐうぐうと白目向いて眠っているが。
