狼は赤ずきんを食べるという。


よくある恋愛小説でも、狼な性格の彼氏が彼女をベッドで食べていたりする。




鈴は猟師と赤ずきんが喜んでいるページを閉じて、ため息をついた。


私がもし赤ずきんなら、晴樹オオカミに喜んで食べられるというのに。




だけど現実は、そう上手くはいかない。


ため息をついて、本棚に絵本を片付けに行こうと立ち上がる。


晴樹の邪魔にならないように、そっと。




パソコンと向き合って、


仕事の時だけかける銀縁めがねを添えた晴樹のキリッとした表情は、


悔しいけど一番かっこいい。


もちろん、どの表情の晴樹も大好きなのに変わりはないのだけれど。