アスラ達をその瞳に映した少年は身を起こし大きく伸びをする。

頭上で巨木の枝がザワリと揺れたがその音すらも響かない。




 「ヤァヤァアスラ。君が来るなんて珍しいね」


 「俺の身体は君の世話になるような身ではないからな」


 「そうだね、不死の身に僕の力は必要無いもんね」


アスラと顔見知りの様子のこの少年。
名を、リゲル・マリスィヴと言い、治癒の力を持つ天使である。




 「処で一体何の用かな?まぁ、大体の予想はできてるけど」


立ち上がり砂を払うとチラリとレノリアへと目を向けるリゲル。


その瞳に微かに冷たさを感じたが、気のせいだろうか…




 「察している通りだ。彼女の怪我を治して欲しい。頼めるか?」


 「…応急処置は済んでるようだから傷の手当ては直ぐに終わるね。君の頼みを訊かない理由なんて無いし、その仕事引き受けてあげるよ」


気が乗らない様子のリゲルだったが、アスラの頼みは断れないとにこやかに微笑み頷いた。