緩やかな風に小雪はハラリと舞う。
もみの木に降り積もる雪が落ちドサリと音を立てた。
フィノの力の制御により荒れた天候は収まり、視界は晴れ遠くまで見渡す事が可能である。
「この先を進めば直に雪山から抜けられるわ。気をつけて」
「そうか。短い時間だったが話ができて良かった」
「此方こそ。久々の来客で楽しめたわ」
互いの話を終え別れの時が近づく2人。
短時間で打ち解けた2人は挨拶を交わす。
そしてアスラは右手を差しだしフィノに握手を求めた。
気恥ずかしそうに笑うフィノはその手を取ろうと右手を動かすが、その白い手は差し出された彼の手を掴む事は無い。
「っ……!!」
「!?」
鋭い音と同時にフィノの胸から噴き出す鮮血。
目を見開く彼女の身体はグラリと揺れ、アスラの真横を通過し倒れて行った。

