こんなことって、ない。

こんな悲しいこと、聞いたことない。

消えてしまう、彼が、美咲を想って。

天国も地獄もない、どこか誰も知らないところへ。

未練も輪廻もない、本当になにもないところへ。

消えてしまう。

死ぬんじゃない。

死なんかちっぽけに思えるほど、もっと、もっとどうしようもなく、なくなってしまう。

あの、やさしい彼が…。


泣き崩れた。

咽喉の奥から絞り出した声が涙と共にシーツに吸い込まれ消えていく。

乾いてしまえば見えなくなる。

彼のように。


ブログトップの詩を思い出し、今ようやく意味がわかった。

拙い詩だと思っていた。

込められた意味など考えたことなかった。

半年以上前からあった彼の決意に、その心に、わたしは気づくことができなかった。

きっと彼は、彼の想いに気づいてほしくて、たくさんの言葉を書いてきたのに。


もうさよならも言えない。

いや、言う資格もなかった。

彼を見送る資格も、引き止める資格も…。

わたしには、わたし達には。