君が好きだから嘘をつく

「それで?その人はどんな人?」

「え?どんな人って。そうだな~、男らしいところもあるけど、グジグジ情けない時もある。でもすごく優しかったりもする。今日もお酒飲んで帰ってくるの大変だろうって、遠いのに車で迎えに来てくれるって言うし。好きな子いるくせにさ、そんなことサラッとしてくれるって言っちゃう人」

「へえ~・・そっか。そりゃあ好きな子いるって分かっても諦められないよな」

微笑んで英輔は言ってくる。
そして手に持っている赤ワインを飲み干した。

英輔にはどんな健吾像が浮かんだだろう?嫌な奴を想像していないといいな。

「楓、頑張ってみなよ。俺お前の笑顔が見たいよ。そうやって休日でも迎えに来てくれるんだろう?もう迎えに来てるのか?」

「うん、今近くのお店でご飯食べているはずなんだ。電話したらここまで来てくれるって」

携帯の時計を見ると2次会が始まってからもう2時間近く経っている。健吾はとっくにご飯を食べ終わっているはずだ。

「もうかなり待たせちゃっているし、明日早いから私先に帰らせてもらおうかな。英輔せっかく会えたのにごめんね、でも話せてよかった。本当にありがとう。英輔は今日帰るの?」

「いや、久しぶりに実家に帰ったし今日は飲む予定にしていたから明日は有給取ったんだ。楓は気をつけて帰れよ、まあ迎えに来てくれるなら、心配ないか」

「うん、じゃあお先に。真奈美と久保くんに挨拶して帰るね」

立ち上がって英輔に手を振って『バイバイ』と言った後、真奈美と久保くんに挨拶し、佑香と友人たちに帰る事を伝える。そして化粧室に行き、健吾に電話した。


「もしもし?」

3コールで健吾が電話に出た。

「あ!健吾ごめんね遅くなっちゃって。今帰るから」

「3次会は?」

「ううん、明日もあるしもう新郎新婦と友達に挨拶したから、すぐ外に出られるから」

「わかった、じゃあすぐ迎えに行く。少し寒いから中で待っていれば?」

「大丈夫大丈夫」

「そっか?じゃあ待ってて」

「うん、お願いします」

電話を切って鏡を見ると口紅が取れていたので、バッグから桜色のグロスを取って唇に薄く塗り髪を整えた。

そして健吾の車を待つ為に少し気持ちを高ぶらせながら、お店の出口に向かった。