君が好きだから嘘をつく

「楓のことが気になったり、寂しく思ったり、腹が立ったり、どうして・・って思っていたけど、年をとっていろんなことが分かったんだ。思ってくれる気持ちも、傷つける言葉も、いろんなこと。だから、楓ごめんな。あの時好きだって言ってくれてありがとう」

そう言って英輔が私に向かって頭を下げた。
ビックリして私は英輔の肩を軽く押す。

「英輔頭上げてよ!違うよ、私が悪いの、私がずるいの、違う・・」

もういろんな感情が溢れて涙が流れた。

英輔がこんなにも想っていてくれたなんて考えてもいなかったから。
勝手に嫌な思い出にして、今日会うことすら苦痛に感じていたなんて。

「楓~泣くなよ~。な、ごめんな。泣かせるつもりなかったんだよ~」

英輔が困った顔しながら、そっと親指で涙を拭いてくれた。

「うん、ごめん」

私もバッグからハンカチを出して涙を拭う。

「じゃあさ、せっかく再会できてちゃんと話せたから仲直りしようぜ。楓それでいい?」

私の顔を覗き込みながら聞いてきた。そっか・・仲直りか、喧嘩じゃないけど今なら仲直りできそうだね。

「そうだね、仲直りしよっか」

英輔の笑顔を見て、私も泣き顔で笑顔になれた。
何か嘘みたい、こんな風にまた英輔と笑顔で話せるなんて。
私が笑顔になれたのを見て「じゃあ、乾杯しよう!」ってカウンターに赤ワインを取りに行ってくれた。

そして再会10年仲直りの乾杯をした。

それから地元の仲間の話や近況について話が盛り上がり、自然と恋愛の話題も話せた。