君が好きだから嘘をつく

「もう10年になるよな。懐かしいよ」

英輔の視線が私を通り越して、昔を思い出している。

思い出す時に戻る10年が、私達の空白の年月。

「うん、そうだね」

思い出すと、苦しくなった記憶。

でも英輔に会った今、あの苦しさが不思議と和らいでいる。

「よく一緒に騒いだよな」

「そう、いつも英輔ふざけていたよね」

「ははっ、よく先生に怒られたよな。それに楓といつも一緒にいたし、みんなも一緒だったけど本当に楽しかったよ。だから・・楓と話すこともなくなって、正直なんでだよ!って思った」

その時の感情は怒っていた気持ちの表現だったと思うけど、月日が過ぎて英輔にとって思い出になっているのか、穏やかな表情をしている。
それがよけいに私の心に刺さる感じがした。

「ごめんね、私が気持ち伝えたりしたから。振られてちゃんと受け止められればよかったのに、どうしたらいいか分からなくて英輔から逃げちゃったんだ」

「俺がひどい言い方したからだよな。本当にあの頃はまだガキで鈍感で、何にも分かっていなかった」

「違うよ、英輔とは友達だったのに、私が勝手に好きになったんだもん。確かに気持ち伝えて英輔に恋愛目線で見たことないって言われた時はショックだったけど・・でも英輔は何も悪くない」

英輔は悪くないと伝えても、英輔はゆっくりと横に首を振っている。

「楓のこと恋愛目線で見たことないって言った言葉は、今でも本当に後悔している。言い訳じゃないけど本当に楓のこと大好きだったよ。それがどんな感情か分からなかったけど、すごく大切な存在だった。愛情とか友情とか区別してなくて、楓の気持ち聞いてあんなおかしな言葉を返した。一緒にいるのが当たり前だったから、あの後も何も変わらないと勝手に思っていたんだ。だから・・楓が俺のそばからいなくなって、話もできなくなって何が何だか分からなかった」

「うん・・うん」

英輔の当時の気持ちを聞いてあの時を思い出すと同時に、英輔も戸惑っていた事を聞いて、英輔を見ながら小さく頷いた。

そんな風に思っていたんだね。