君が好きだから嘘をつく

「あれ?」

キョロキョロと周りを見渡すと、今まで座っていた席の少し奥に佑香を見つけることが出来た。
その隣には同じ年位の男の人がいて。4人の席に2人だけで座っている佑香の顔は嬉しそうで。
もしかして披露宴の後に言っていた【かっこいい人】ってあの人かな?
私は邪魔する気もないのでそのままカウンターに行ってカクテルを作ってもらい近くの席に座ることにした。
そしてカクテルを2口飲んだところで声をかけられた。

「久しぶり」

顔を上げると目の前に立っていたのは・・英輔だった。

「あっ・・・」

突然のことで視線も開いた口も止まったままになり、動かない私を気にすることなく英輔は私の隣に腰を下ろしてきた。

私の視線も隣に座った英輔へと移動し、少し開いた2人の距離が私には視線を逸らせない空間を作っていた。

今まで2次会の間に近寄って来た人達は、やたらと距離を詰めて話しかけてきたので顔を寄せられた瞬間にクッと顔を逸らせてきた。
でも今、隣に座ってこっちを見ている英輔は一人分のスペースを空けて座り、体ごとこっちを向いている。

そんな英輔を私は、ただ見続けてしまった。