君が好きだから嘘をつく

「どうだった?もうこっち着くって?」

「まだみたい。着いたらとりあえずご飯食べて待っていてくれるって」

私がそう答えると、佑香は笑みを見せた。

「へ~、優しいじゃない。本当にさ、ただの友達関係なの?」

「そうだってば。自分で嫌になる位友達だよ」

「何にもないの?」

「何にもない!」

佑香のアホな質問には怒ったけど、確かにさっきの電話で私も思った。
休日に遠くまで迎えに来てくれて、2次会が終わるまで時間潰して待っていてくれるなんて。
本当に勘違いしてしまいそうになる。でも違うんだって自分に言い聞かせて余計に切なくなった。

「ごめんごめん、でもさ楓・・・諦めないで、ね!」

「うん、ありがとう」

2人で笑い合って、2次会の幹事が挨拶スピーチを始めた方に視線を向けた。

2次会は同級生や同じ年頃の集まりだからすぐに盛り上がった。
披露宴の時からお酒が入っているから、初対面の人達でも関係なく挨拶を含め乾杯しあえた。
幹事主催のビンゴゲームは文句なく盛り上がり、友達も知らない人も関係なく騒ぎ会えた。

一段落ついたとこでトイレに行き、何となく一休憩で化粧直しをした。

盛り上がる空気に少し疲れを感じたので、小さなため息をついた。2次会は出会いの場でもあるので知らない人でもグイグイ距離をつめてくる。まあ、お酒もかなり入っているからね。
でも、初対面で電話番号やアドレスを聞かれたりするのはやっぱり苦手。
佑香がうまく話を逸らしてくれたから、何とかその場を済ませられたけど。

働いてから健吾を好きになって合コンの話もほとんど蹴ってきたから、慣れていないと言うか逸らし方がわからない。番号やアドレスを教えないということが、相手を不快にさせるのかもわからない。
そんなやりとりが何度か続いて何となく疲れて、佑香に『トイレに行ってくる』と言って抜け出した。

とりあえず化粧直しも終わったので戻ることにした。
席に戻ろうと近くまで行ったところで、今まで座っていた席に佑香がいないことに気付いた。。