「英輔への想いは引きずっていないけど、気持ちを伝えて振られて英輔と話すこともできなくなった恐怖心は今も引きずっているよ。結局自分が悪いんだけどね」

私が言うと佑香は横に首を振った。

「そんなことないよ。私も同じ事があったらやっぱり話せなくなってたと思うよ。本当に仲良かったからね、楓と英輔はさ」

「うん・・振られて全てなくなっちゃった感じだったなぁ。でも英輔に振られた後に好きだと思った人に告白して振られても平気だったのにね、何が違ったのかな?」

「だって英輔のことで懲りて、友達になる程仲良くなる前に告白していたのでしょ?」

「うん、仲良くなって振られるのは避けていたからね。でも、英輔に振られた後に告白した人も付き合った人も正直言えば本当に好きだったって今は言い切れないな・・」


そうなんだ。知り合って話が合っていいなって感じた人に何となく気持ち伝えたり、『つきあって』って言われて付き合ったけど、【この人じゃないとダメだ】と心から思う人はいなかった。
今思えば、相手にも失礼なことだったと思う。
それ位相手を真剣に見ていなかったし、気持ちの執着心も持つことができなかった。


「じゃあ、健吾くんは?」

話している相手は佑香なのに一瞬言葉が詰まる。でも思っているまま伝えるしかない。

「諦められないくらい好きみたい・・」

「そっか」

少し微笑んで頷いてくれた。

「諦められたら楽なのにね」

言いながら頭の中に健吾の顔が浮かぶ。


「そっか・・楓がそんなに想う健吾くんに1度会ってみたいな」

その言葉を聞いて昨日の健吾との約束を思い出した。

「あっ、今日迎えに来るって言ってた」

2次会の後迎えに来てくれることを伝えると佑香はポカ~ンとした顔になった。