「何で?」

「だって・・・健吾だって伊東さんと同じ会社でしょ?そこに私はもういないし。不安は私だってあるよ」

「それは心配ないから」

「分かっているよ。分かっているけど・・・また誘われるって言うか、相談にのってって言われたら断れないでしょ?」

つい、余計なこと言ってしまう。
そんなモヤモヤした気持ちが嫌で、頭まで布団をかぶって全てを隠す。
するとその布団ごとぎゅっと抱きしめられた。そして優しい声で私をなだめる。

「楓、大丈夫だから。俺も楓と同じように、楓と伊東さんへの気持ちは全然違うから。楓を心配させることはしないから、約束する。だから楓も俺を信じて?」

そんな健吾の言葉にモヤモヤした気持ちも簡単に治められてしまう。
ちゃんと健吾の気持ちは伝わってきているから。こうやって私はこれからも負けてしまうかも。
なんかムズムズとくすぐったいような気持ちになって、健吾をいじめたくなってしまった。
布団から顔を出して健吾を見る。

「本当?」

「うん、本当」

「信じていい?」

「信じて」

「伊東さんとは何もない?」

「ないよ」

「何にもなかった?何にも?」

「・・・」

健吾が困った顔して言葉を止めた。私の『何にもなかった?何にも』の意味が分かったのだろう。今の気持ちではなく、『2人で会っていて2人の仲に何にもなかったのか?』という問いを察知したのだ。
健吾も正直だからなぁ・・・

「楓」

「なぁに?」

「楓~ごめん・・怒るなよ・・・」

「怒ってないよ」

かわいそうになって笑って答えると、更にギューっと抱きしめてきた。
結局お互い信じるしかないんだ。それはきっとできる、今の健吾を見ていればちゃんと確信できる。
この愛は大切にしたいから。
私の言葉と笑顔を見て安心したらしい健吾も、柔らかい笑みを見せた。
だから最後の意地悪を。

「健吾、コーヒーでも飲む?」

「うん、飲む」

待っていた答えを聞くことができた。

「じゃあ、昨日健吾が後で飲むって言ってたコーヒー注いでくるね。保温したまま凝縮されているからね」

健吾に意地悪な微笑を見せると、情けない困った顔を見せた。

「楓・・かんべんして」

そんな健吾が可笑しくて笑ってしまう。

「嘘だよ。今淹れたてのコーヒー持ってくるから待ってて」

ベッドのそばに置いてあった部屋着を着ながら健吾に視線を送る。

大丈夫、私達はこれからだから。
これからまた2人で新しい関係を作っていこう。