「ねえ・・健吾。英輔は・・確かに昔好きだったけど、今は友達以上の何でもないよ。そばにいても他の人達と同じだよ」
「それでもどうしようもなく気になるよ。お前があいつを好きだったってことも、近い存在ってことも」
「うん・・」
何故か微かな罪悪感が押し寄せてくる。そう感じてしまう程、健吾が真面目な顔をして語っているからだ。
こんな風に話せると思わなかった。今までずっと気持ちを悟られてしまったら拒否されると思っていたから。だから段々健吾の言葉を自然に受け取れるようになってきた。
「でも結局俺のやきもちなんだよ。あいつだけじゃない。他の奴がお前に近づくのもむかつく。声かけられたり、誘われたりするのを見ればな。これってやっぱり嫉妬だろ、独占欲だよな。それって何でだと思う?」
首を傾げながら私に答えを求める。そんな健吾の言っている内容に胸がいっぱいになる。
健吾が私に嫉妬や独占欲なんて感じるなんて。
「何でって・・」
答えに困っていると、今度は質問を変えてきた。
「じゃあさ、楓は全てをなかったことにして新しい環境でまた新しい恋をしようと思った?」
「思ってないよ」
私が即答すると、健吾は柔らかい笑顔を見せた。
その笑顔が恋しくて切なくなる。こんなに自分の気持ちをさらして健吾に向き合うことができていることで嬉しさが溢れる。その上、健吾の思っていることまで話してくれて。その言葉の1つ1つの意味を考えていると、健吾の口からハッキリとは聞いていないけどちゃんと伝わってきた。
「ってことはまだ遅くないかな?」
「・・・うん」
「でもまだちゃんと聞くことができていないんだよね。楓の・・気持ちをさ」
いたずらっ子のように笑顔を含んで私に言わせようとしている。好きという言葉を。
諦めてずっと言えなかったけど、今なら言ってもいいのかもしれない。それは目の前の健吾を見れば十分分かる。もう嘘なんていらない。
「好き。ずっと・・好きだったの」
その言葉を言った瞬間、思いっきり抱きしめられた。想像していなかった健吾の行動に、思考も顔もポカンとしてしまう。そんな私に視線を合わせてきて、満面の笑顔を見せた。
「やっと聞けた。すっげー嬉しい。楓、すっげー可愛い」
嘘みたいな反応に嬉しさと驚きで、無意識に涙が頬を伝った。
すると健吾はまた親指で拭いながら困った風な顔をした。
「ばーか、泣くな。お前が泣くと俺やばいよ」
「誰が泣かせているのよ」
「あ~、俺だな。ごめん。」
「ばか~」
言葉にしたら余計に涙か溢れてきた。そんな私に「分かった、ごめんな」と言いながらまた抱きしめてくれた。そしてそのまま顔の見えない状態で健吾がささやいた。
「今は俺の気持ちを言っても真実味がないかもしれないから言わない。楓、ごめんな。でもちゃんと楓に信じてもらえるって思った時に伝えるからさ。もう少しだけ待っててくれる?」
そんな健吾の誠実な気持ちがちゃんと伝わってきたから、健吾の心配そうな瞳を見ながら、「うん」と返事をした。そしたら健吾も笑顔を見せて、また抱きしめてくれた。
冷えていた身体は、いつのまにか温かく感じていた。
そしてまた手をつなぎながら今度は横に並んでゆっくり歩いた。
もう私のアパートのそばまで来ていることに気持ちが少し焦る。やっと気持ちが伝わってそばにいられると思ったのに、もう帰ってしまうなんて。
もう少しでいいから一緒にいたい。
そんなことを考えているうちに、アパートの前に着いてしまった。
「じゃあ、またな。帰ったら、連絡する」
そんな言葉に余計に気持ちが切なくなる。いろんな事がありすぎて、やっと整理した気持ちがまた溢れてしまう。今はまだ離れたくない。
「寄って行く?」
そっと聞いてみた。そばにいて欲しくて、『うん『』の一言を待っていた。
「ううん、今日は帰るよ。また今度寄らせてもらうから」
求めていた答えが返ってこなくて、胸が苦しくなる。
今までの私ならここで『分かった』と言っていたけど、今の私はそう言えなかった。
とにかく今健吾を求めている。溢れてしまった私の気持ちは、自分で抑えられなかった。
「コーヒー・・飲んで行かない?」
健吾の胸元をそっと掴んで、うつむきながら誘ってしまった。
すると健吾はため息をついた。
あっ・・いけない!と思って健吾を見ると困った顔をした後瞳を閉じ、そしてもう一度視線を合わせてきた。
それを見て「ごめん」と言いかけた時、健吾がかすれるような声で言葉を重ねた。
「お前・・無防備過ぎ。今日の状態で誘うようなこと言ったら、どうなったって知らねーぞ。お前俺のこと男だって理解してない」
拗ねたようにたしなめる健吾に、あえてもう一度言う。
「寄って行く?」
健吾の言葉を理解した上でもう一度誘った私の顔をじっと見た後、
「寄って行く」
そう答え、私の肩を抱いて一緒に歩き始めた。
「それでもどうしようもなく気になるよ。お前があいつを好きだったってことも、近い存在ってことも」
「うん・・」
何故か微かな罪悪感が押し寄せてくる。そう感じてしまう程、健吾が真面目な顔をして語っているからだ。
こんな風に話せると思わなかった。今までずっと気持ちを悟られてしまったら拒否されると思っていたから。だから段々健吾の言葉を自然に受け取れるようになってきた。
「でも結局俺のやきもちなんだよ。あいつだけじゃない。他の奴がお前に近づくのもむかつく。声かけられたり、誘われたりするのを見ればな。これってやっぱり嫉妬だろ、独占欲だよな。それって何でだと思う?」
首を傾げながら私に答えを求める。そんな健吾の言っている内容に胸がいっぱいになる。
健吾が私に嫉妬や独占欲なんて感じるなんて。
「何でって・・」
答えに困っていると、今度は質問を変えてきた。
「じゃあさ、楓は全てをなかったことにして新しい環境でまた新しい恋をしようと思った?」
「思ってないよ」
私が即答すると、健吾は柔らかい笑顔を見せた。
その笑顔が恋しくて切なくなる。こんなに自分の気持ちをさらして健吾に向き合うことができていることで嬉しさが溢れる。その上、健吾の思っていることまで話してくれて。その言葉の1つ1つの意味を考えていると、健吾の口からハッキリとは聞いていないけどちゃんと伝わってきた。
「ってことはまだ遅くないかな?」
「・・・うん」
「でもまだちゃんと聞くことができていないんだよね。楓の・・気持ちをさ」
いたずらっ子のように笑顔を含んで私に言わせようとしている。好きという言葉を。
諦めてずっと言えなかったけど、今なら言ってもいいのかもしれない。それは目の前の健吾を見れば十分分かる。もう嘘なんていらない。
「好き。ずっと・・好きだったの」
その言葉を言った瞬間、思いっきり抱きしめられた。想像していなかった健吾の行動に、思考も顔もポカンとしてしまう。そんな私に視線を合わせてきて、満面の笑顔を見せた。
「やっと聞けた。すっげー嬉しい。楓、すっげー可愛い」
嘘みたいな反応に嬉しさと驚きで、無意識に涙が頬を伝った。
すると健吾はまた親指で拭いながら困った風な顔をした。
「ばーか、泣くな。お前が泣くと俺やばいよ」
「誰が泣かせているのよ」
「あ~、俺だな。ごめん。」
「ばか~」
言葉にしたら余計に涙か溢れてきた。そんな私に「分かった、ごめんな」と言いながらまた抱きしめてくれた。そしてそのまま顔の見えない状態で健吾がささやいた。
「今は俺の気持ちを言っても真実味がないかもしれないから言わない。楓、ごめんな。でもちゃんと楓に信じてもらえるって思った時に伝えるからさ。もう少しだけ待っててくれる?」
そんな健吾の誠実な気持ちがちゃんと伝わってきたから、健吾の心配そうな瞳を見ながら、「うん」と返事をした。そしたら健吾も笑顔を見せて、また抱きしめてくれた。
冷えていた身体は、いつのまにか温かく感じていた。
そしてまた手をつなぎながら今度は横に並んでゆっくり歩いた。
もう私のアパートのそばまで来ていることに気持ちが少し焦る。やっと気持ちが伝わってそばにいられると思ったのに、もう帰ってしまうなんて。
もう少しでいいから一緒にいたい。
そんなことを考えているうちに、アパートの前に着いてしまった。
「じゃあ、またな。帰ったら、連絡する」
そんな言葉に余計に気持ちが切なくなる。いろんな事がありすぎて、やっと整理した気持ちがまた溢れてしまう。今はまだ離れたくない。
「寄って行く?」
そっと聞いてみた。そばにいて欲しくて、『うん『』の一言を待っていた。
「ううん、今日は帰るよ。また今度寄らせてもらうから」
求めていた答えが返ってこなくて、胸が苦しくなる。
今までの私ならここで『分かった』と言っていたけど、今の私はそう言えなかった。
とにかく今健吾を求めている。溢れてしまった私の気持ちは、自分で抑えられなかった。
「コーヒー・・飲んで行かない?」
健吾の胸元をそっと掴んで、うつむきながら誘ってしまった。
すると健吾はため息をついた。
あっ・・いけない!と思って健吾を見ると困った顔をした後瞳を閉じ、そしてもう一度視線を合わせてきた。
それを見て「ごめん」と言いかけた時、健吾がかすれるような声で言葉を重ねた。
「お前・・無防備過ぎ。今日の状態で誘うようなこと言ったら、どうなったって知らねーぞ。お前俺のこと男だって理解してない」
拗ねたようにたしなめる健吾に、あえてもう一度言う。
「寄って行く?」
健吾の言葉を理解した上でもう一度誘った私の顔をじっと見た後、
「寄って行く」
そう答え、私の肩を抱いて一緒に歩き始めた。



