沈黙した教室を破ったのは私だった。


「柊くんはさ、お洒落とか興味ないの?」

「…うーん。無くはないけど…」

意外な返事に若干戸惑いながらも話を続けた。


「そうなの?…ねぇ、眼鏡外してみてよ」

「いや、ちょっと…それは…」

「ねぇ、少しで良いから」


戸惑う彼の気持ちより、私の好奇が勝った。
素顔を見てみたい。ただそれだけだった。


「少しだけ、な」

彼はもっさい前髪で顔を隠しながら眼鏡を外し、私を見た。


「ーー…っ」

その素顔に驚くのは、本当に意外だったから。声も出なかった。