グッと唇を噛んだ王子は「そうだよ」と私を見てとても低い声で言った。
「パっとしないクラスの奴と話すより、よっぽど楽しいと思ったからだよ。美人な遥だっているし、真衣さんからかうのは楽しいし」
でも、その顔は悲痛な表情で心の声はダダ漏れだった。
ーー…『たすけて』
と、そう言われている気がした。
王子の気持ちは分からない。
母親に捨てられて、すり寄られて、また捨てられる…
それでもなお、涙を流した王子。
あの時のカフェでの涙は、きっと王子の本当の気持ちだった。
「……っ」
私に何ができるだろう。
何がしたいのだろう。
でもほっておくことが出来なくで、冷たい涙が頬を伝った。
何の考えもないのに、人を責めることだけ一人前の自分に嫌気がさす。


