* * *
「あ、真衣さん!おっはよー」
次の日、学校に行くと、いつものように王子は遥を追いかけ回していた。
嫌がってため息をつく遥と、そんな遥の心情を読み取ろうとしない王子。
「…おはよう」
なぜ、今まで気がつかなかったのか。
今はこんなにも王子が明るく振る舞おうとしていることが手に取るようにわかるのに。
「あれー?真衣さん元気ないね」
遥から離れて私に近付く王子は、やっぱり少し切なそうな顔をしていた。
ーーだから…
「王子、無理しないで」
咄嗟にこんな言葉が出てしまったの。
ピクっと肩を上げる王子は、ニヒっと子どものように笑って「無理してるって?何のこと?」と、誤魔化す。
明るい玄関に、射し込む光が王子の髪に反射するからだろうか。
眩しくて、目が眩むーー
「真衣ちゃん、おはよう。王子と山本さんも」
挨拶が聞こえて、後ろを振り返ると、先輩が靴を履き替えてこちらを見ていた。
「先輩、おはよー」
王子はまた、明るく先輩に挨拶を返す。
遥はその隙に教室へ行ってしまった。
「王子、仮にも俺は先輩だよ?おはようございます。だろ?」
「おはよう!先輩!」
ニコニコしながら背の高い先輩におどける王子。
「まぁ、いいか」と、先輩は気にも留めていなかった。


