「なんで、真衣さんがここにいんの?ストーカー?」
嫌味ったらしく発する言葉も、今だけは嫌味に聞こえない。
無理に作る笑顔が、とても切なかった。
「ごめん…偶然なんだけど…」
「いや、いいよ。別に隠してないし」
…下手くそな、嘘。
いつも悩みなんてありませんって素振りを見せて、天真爛漫を装っている。
それのどこが“隠してない”というのか。
「…王子……」
「やめて。…何も言わないで」
王子は、静かに涙を流した。
たった15歳の少年が、今までの人生、どんな苦難があったのだろう。
そう考えると、私も少し泣けてきた。
先輩もお母さんが出て行ったと行っていた。
けれど、先輩とはまた違う母との距離。
静かに涙を流す王子は、ただの一人の子どものように思えた。


