何かあるとは思ってた。
人の話しは聞かないし、自分勝手で、人を自分のペースに持って行くのが上手い。
天真爛漫なふりをして、心には何か秘めていると思ってた。
ーーだけど、こんなことって……
両手を口に持って行ったその手を下ろすタイミングを見失った。
ちょうど運ばれてきたラテがゆらゆらと湯気を立ち上がらせる。
その湯気が一度大きく動いた時、テーブルの上に影が出来た。
ハッと顔を上げると、王子が向かいに項垂れるように座っていた。
「王子…」
私が呟いた声に王子は反応しない。
少しの沈黙のあと、王子はゆっくり顔をあげた。
泣き出しそうな顔に、胸が痛かった。


