「ーーだから、何度も言っているじゃない。私の一番大切なのは、息子である貴方だって。徹平…」
「よくそんなこと言えるな。昔っからアンタは男と別れる度に俺のとこに来る。
捨てた息子に擦り寄ってくるな」
……それは、最近とても聞き慣れた声だった。
気付かれないように、そっと後ろを振り返ると風になびいた金髪が、日が落ちたが為に付けているライトに眩しいくらいに反射していた。
「そんな言い方…。本当に、貴方は誰に似たのかしら」
「さぁな。俺の父親が誰かもわかんねーだろ」
頬を掠める風が異様に冷たかった。
聞きなれた声、眩しいくらいの金髪。
私の後ろにいるのは、まぎれもなくあの天真爛漫なはずの王子だった。
「……とにかく。すぐに部屋の荷物をまとめなさい。まとめ次第すぐに私と暮らすのよ」
「嫌だね。アンタのとこには行かない。また捨てられるのがオチだろ」
まったく。と、ため息をついた女性が立ち上がると、伝票を持ってレジに向かった。


