「それにしても、王子。すごい子だね」
「へ?…あぁ、うん」
「王子ってあだ名だけあって、本当に王子みたいなんだってね。見てみたーい」
柚花は王子を履き違えてる。
私たちが幼い頃から知っている王子は、優しくて格好良くて金持ちで、人の気持ちを考えてるし、強引なことをしない。
キスだって、お姫様を助けるためのーー
言わば人工呼吸のようなもの。
なんて優しいんだ、お伽話の王子よ…
それなのに、種村徹平という他称、王子は全然違う。
天真爛漫なふりでもしてるんじゃなかって思うほど、人の話しは80%聞いていないし。
とにかく、自分のペースに持っていくのが、すごい得意。
あの子は、すごく頭がよくまわる子なんだと思う。
「私、もうあの子と関わりたくない…」
柚花のベッドに顔を埋めると、柚花は私の頭をよしよしと撫でてくれた。


