そんな少し不満もあるけれど、平凡になりつつある平日のある日の屋上でのことだったーー
「朝比奈、真衣さん」
飲んでいたペットボトルを、ぶはっ!と吐き出すほど驚いた。
細くてスラっと伸びた手足。
着崩した制服。
太陽に反射してキラキラと輝く金髪。
整った目鼻。
イケメン…いや、王子だ。
あれはお伽話から出て来た王子だ。
ヨーロッパの正装を身につけいてもおかしくはない。
そんな一人の少年…いや、王子が屋上の入り口から私を呼んだ。
遥、柊くん、先輩…みんな口をあけて王子を見つめている。
あんぐり、という表現がよく似合う。
「朝比奈真衣さんってどっち?」
王子は、私と遥を交互に指をさす。
「あ、私ですけど…」
おずおずと、手をあげて王子に自分を示すと、明らかに「えー」と残念そうな顔になる。
ーーおい、悪かったな。遥みたいに美人じゃなくて!