先輩が変わりたかった理由。
それはきっと、お母さんに「もう大丈夫だよ」と伝えたかったから。


生気のない目。
ヨレヨレの制服。
前も後ろも手をかけられていないウェーブのかかった髪の毛。

考え事をしていたというのは、きっと結婚式に来るか迷っていたらーー



そんな自分を見せられなくて。
でも、きっと先輩は誰よりもお母さんの幸せを願っていたんだと思う。




「先輩、行かなくて良いんですか?」


柊くんが先輩に問うと、先輩は静かに頷いた。
「遠くで見てるだけで良いんだ…」
そう言う先輩の体は前のめりで、お母さんの元に行きたいと言っている。



見つめる先にいる、先輩のお母さん。
幸せそうに笑うそう女性は、一瞬止まったあと、パっとこちらを見た。