彼が、私にノート提出を急かすということはみんなが出していると言う事。
なるほど、そこまで頭が回っていなかった。



「そうだよね。どうしよう。…て、先生に頭下げるしかないよね」

あはは。と、頭を掻きながら困っていることを誤魔化すと、彼はうーんと考えた末に口を開いた。



「僕のノートまだ出してないけど、写す?今、違う人に貸してるから放課後で良いなら…」

「…え?」



まさかの展開に驚いた。
けれど、正直かなり助かる。
このもっさい男と放課後過ごすのは癪に障るけど、もっさい男より今は数学のノートが大事。


「ありがとう!あの…助かる!すごく」

分厚い眼鏡のせいで、彼の表情は見えなかった。
けれど、そんなのは関係なかった。

ただ、数学のあの怖い先生に怒られなくて済む…それだけの感情だった。