奥から「はい、出来上がり」と高橋さんの言葉と共に先輩の歓喜の声が聞こえてくる。
私と柊くんは顔を見合わせて、どんな仕上がりになったのか、期待で胸を弾ませた。
奥から出てきた先輩は、今日初めて会った時のような生気のない目をしていなくて。
優しい目つきがより際立った。
長さはあまり変えず、けれど、サイドはスッキリしていて、後ろの方をピンで留めている。
無精髭はアゴのところだけを綺麗に残していた。
眉毛も太く男らしいけれど、毛並みは揃えられていた。
「うわぁ。先輩格好良いですよ!」
最初に口を開いたのは柊くんだった。
私も彼の言葉に同意する。
「そ、そう?」と照れる先輩の顔はまんざらでもなさそう。
ワイルドにっていうから、長さあまり変えなかったよ。そのままでいたいなら月一くらいでメンテに来て。
レジでお会計をしている時に、高橋さんは先輩を見て言った。
先輩は「分かりました」と出来立ての髪の毛をイジっている。


