美容室に着くと、お客さんは誰もいなかった。
高橋さん曰く、前のお客さんがどのくらいかかるか分からないから余裕を持って予約をとっているとのこと。
高橋さんは先輩を見るなり「真衣ちゃんはモテモテだね」なんて言ってからかう。
「先輩はワイルド系にしたいんですけど、お願いできますか?」
私の問いにすぐ大丈夫と言ってくれる高橋さん。
先輩のことは任せて、柊くんと二人で椅子に腰をかけて待つ事にした。
「ねえ、大樹。時間大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。うちって意外と放任だし、姉ちゃんが会ったこともないのにえらい真衣のこと気に入ってるんだよね」
もさ男からイケメンに変えたから?
雑誌を広げて彼にこう言うと「多分ね」と彼も雑誌を手にとった。
この美容室のシャンプーの香りはとてもいい匂いで。
眠気まで誘ってくる。
このシャンプーを買いたいけれど、かなり高いからポイントが貯まるまでおあずけ。
うつらうつらと眠気と戦いながら雑誌に目を通す。
なんだって世の中はイケメンに目がないんだろうと思わせるような記事が多数あった。
それを見て、やはりため息をつく。
ーー私の彼氏は…なんてお馴染みの思考。


