「朝比奈さん」

10分休み、机に肘をついて外を見ていた時にふいに呼ばれた私の名前。


「…な、なに?」

もっさい前髪、黒縁の分厚い眼鏡。
漫画から飛び出してきたような、優等生ぶりなクラスメイトが立っていた。



「数学のノート提出、出してないの朝比奈さんだけだよ」


ーー…あぁ、この人、声だけは良いんだけどなぁ。


「…朝比奈さん?」

「あ、ごめんね。平田くん」

「……柊です。柊 大樹です」


私ったら、クラスメイトの名前すら覚えていなかったなんて…
イケメン以外本当に興味がないんだなぁ。と、自分で少し感心した。