「真衣ー!」
玄関でローファーに履き替えようとしたところで遥に呼び止められた。
「ハルちゃん。何?今、急いでて…」
「あ、そうなの?てか、柊くんどうしたの?」
「ふふ。私がイケメンに変えたの!」
イケメンとの出会いから一転か。
遥は悪戯っぽく笑って「じゃあまた今度遊ぼう」と言って、長い髪をまとめたポニーテールを揺らして去っていった。
「朝比…あ、真衣。行かないの?」
遥の美人な後ろ姿を見ていたら、柊くんより遅くなってしまった。
「あ、ごめん。今行く」
今度こそ、ローファーに履き替えて柊くんと一緒に柚花のいる高校までダッシュした。
はぁ、はぁ、と、息があがる。
柊くんは、そんな私とは対象的に颯爽と走り続けた。
行き交う人は、そんな彼を振り返ってみている。
やっぱり、究極のイケメンだと思った。
柊くんは、遅い私も気にかけるように振り返って微笑む。
汗が滲んだ額はキラキラと光っている。
はぁ。はぁ。
ーーあと、少し…


